一文字のこだわり~ITとICT~

2016.10.10 岡田定晴
 ムーンライト・カフェ(作曲:Amacha)

 ブログ「平成の徒然草~ICT版~」の「ICT」という言葉に込められている私の“ささやかな拘り”を述べたいと思います。

 先日、一流企業の部長まで務め、今もフリーで活躍している友人に「ITって、インターネットの略だろ。」と言われて唖然としました。 それがきっかけで、世の中で分かったつもりになっている人が多いIT関連の言葉ですが、案外「正確な意味や使い方を間違えていたり、 或は勘違いしている人々が多いのではないか。」と思ったのです。 同じように、技術者の世界でも「IT」と「ICT」と言う「C」一文字を意識し区別して使っている人がどれだけいるのか、大いに気になります。 そこで、今回は「C」一文字の違いについて考察し、私のささやかな拘りについての賛同を皆様から得られればと思います。

 我が国ではIT(Information technology)もICT(Information and Communication Technology)も、同じような意味で使われており、 その違いはあまり意識されていません。ITは、Information「情報」technology「技術」の略で、一般的に情報処理をするコンピュータ技術のことを言います。 ITを「インターネットの略」と言った友人にも理解できるようにITの「Ⅰ」が意味する「情報」「情報処理」という言葉から説明していきます。



広告

 先ず、「情報」と言う単語を具体的に挙げて説明します。例えば、クレジットカードを持っている人が「いつ」「どこで」「どんな店(デパート、専門店)で」 「価格いくらのモノ」を買うのか、更に買う人の「年齢」「男女」「年収」「マンションか戸建てか」「賃貸か持ち家か」というような一つ一つに関することが、 私が言う基礎的な「情報」そのものです。そして、その情報を多角的に集め、蓄積し、統計的に分類・整理し、 何らかの特徴的傾向(例えば、専門店で2万円以上の買い物をする人は40歳以上の女性が多い等)を分析提示することが「情報処理」と言う事になります。 つまり、「IT=情報(処理)技術」という言葉は、文字通り「情報処理」と、その「技術」を意味するのです。昔は、情報を集めコンピュータにインプットする のは専門の担当者たち。彼らが直接コンピュータに入力したり、遠方の場合はそのコンピュータと専用回線で結ぶことでしか「情報処理」の作業は出来ませんでした。 つまり、「情報」は限られたコンピュータが設置されている、限られた場所に閉じ込められていました。

 今度は「IT」に「C」一文字を足して「ICT」と言う言葉にすると、どうなるのでしょう。何が違うのでしょう。 ・・・こう書いてくると、とんでもない誤解をしていた私の友人でもピン!と来ることでしょう。 ICTは、Information「情報」 and Communication「通信」Technology「技術」の略で、情報や通信に関連する科学技術の総称です。 つまり、ITに Communication「通信」の技術が加わったものです。ここで言う「通信」とは、共通の規格に基づいて張り巡らされた ネットワーク間の情報通信を行うことを意味します。ですので「情報」は、一台のコンピュータの中というような「限られた場所」に閉じ込められたり、 「限られた人」しか扱えないものではなく、「多くの人々」によって、通信回線を利用して「時間・空間の制約なしに自由に移動・やりとりできる」 ものとなります。ある意味では、閉じ込めていた情報を、一気に世の中に拡散させた技術がICTであり、それはITの時代から「情報」の「質」と「量」を劇的に変化させました。 自宅に居ながらにして、航空券やビジネスホテルの予約や銀行振り込みなどができるようになりました。 ですので、「C」一文字の違いは情報の通信と言う科学技術面からも社会生活面からも一大革命・イノベーションをもたらすほど、大きな違いを持つものなのです。 それは又、世界中のコンピュータが共通のネットワークにつながり始めたと言う、もの凄いことなのです。

 私が「IT」という言葉から連想するものは、「企業の情報システム部門(IT部門)」であって、「通信」や「インターネット」を連想させるものではありません。 社会や生活への情報技術の適用や 応用ということも思い浮かんできません。あらゆるコンピュータ、スマホ、タブレット、装置、センサー、などが 世界で一つの 巨大ネットワークであるインターネットに繋がり、従来の技術に代わって、インターネットやWebの技術が 非常に重要な役割を果たすようになりました。 日本では、ITの方が定着していますが、国際的にはICTのほうが使われています。ITという言葉が、汎用コンピュータの時代から使われ始め、 急速に発展した「インターネット」を忘れているように 思えてなりません。 こうしたことから、私は、敢えてICT(Information and Communication Technology 情報通信技術)という言葉を使ってこのブログを記述していきます。


※参考:日本でのITとICTの使われ方。 経済産業省のHP 内を検索すると、IT人材の育成、IT経営の促進、IT融合、IT活用指針、などの言葉が多く使われています。 総務省のHPにある「政策」の項目は、情報通信(ICT政策)、ICT成長戦略、ICT利活用の促進など、「ICT」で統一されています。 内閣官房の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)は、ITの利活用で未来を創造する国家ビジョンとして「世界最先端IT国家創造宣言」を策定しています。


TOPへ


 平成の徒然草ICT版    これまでのブログ

 広告




 広告