メキシコで初めて体験したUber(ウーバー)

2017.07.29 岡田定晴
 セピア色の渚(作曲:Amacha)

 Uber(ウーバー)という言葉は聞いたことがありますが、日本では様々な規制から普及が進まず、まだ身近なものになっていないため、 実際にUberを体験したことはありませんでした。ですから、どのようにして使うのか、どのような利点があるのかがわかりませんでした。

 ところがメキシコに来て、車が運転できない場合の移動手段として、Uber(ウーバー)は日常生活に欠くことのできないものになりました。 タクシーはありますが、Uber(ウーバー)を利用するほうが快適です。まだ、市の中心部と、ショッピングモールや観光地の往復に使った 実績しかありませんが、Uberを利用してみて世界中で普及が進んでいる理由が納得できました。

 Uberを利用するには、先ず、スマホでUberのアプリをダウンロードして、使用者のアカウントを作成し、氏名、メール アドレス、 電話番号の登録を行います。電話番号は匿名にされ、顧客と運転者が連絡を取る時もお互いの電話番号を知ることはできません。 運賃の支払いをクレジットカードから引き落とすことが出来ますので、これも登録しておきます。

Uber スマホ画面  Uberを呼ぶときは、Uberのアプリを起動して、現在位置と行き先を指定します。そうすると、利用料金が示されます。 車を呼ぶことを決定すると、Uberの情報システムが、近くを走行している車を探します。自分のオーダーを引き受けてくれる車があると、 顔写真入りの運転者の氏名、車種、ナンバーがスマホに表示されます。また、迎えに来る車の位置が地図上に表示され、あと何分くらいの位置に いるのか表示されます。その後、迎えに来る車の移動状況とあと何分くらいの位置にいるかが逐次スマホに表示されます。 車のナンバーを記憶して、接近してくる車のナンバーを確認しつつ待ちます。



Uber スマホ画面 Uberがお迎えに  車が到着すると、運転者がこちらの名前を確認するので、Buenas tardes(こんいちは)とかBuenos dias(おはようございます)と挨拶して乗車します。 運転者は、既に自分の行き先を知っていますので、言葉がわからないのに無理して話をする必要はありません。Uberに乗る前から、 運賃も、到着時刻も、運転者の評価も、車のナンバーも、車種もわかっているので、安心して乗車できます。 すべての送迎で GPS データが記録され、送迎ごとの乗客や目的地も Uber が把握します。 目的地に到着したとき、運賃を現金で支払う必要はありません。クレジットカードで決済されます。 「Gracias(ありがとう)」と言って車を降りるだけです。

Uberにお別れ  スマホを見ると、運転者の評価を5段階で求められていました。そう言えば、運転者は自分が運転している日本車の自慢をしたり、 私が持っているカメラのメーカーを訊いて褒めるなど、良い評価を貰おうと気を遣っていたのかなと思い当たります。 あとでわかったのですが、運転者も乗客の評価ができるようになっているようです。ですから、お互いに悪い評価を付けるようなことは 避けたいという仕組みができているので、安心して利用することができます。もし、自分でスマホのアプリを使うことができなければ、 アプリの使える家族に現在地と行き先を伝えてUberを呼んでもらい、車のナンバーを教えてもらえば良いのです。



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 日本では、もう半世紀も前から、「タクシー無線」がありました。タクシーを利用したい人が、タクシー会社に 電話をすると、タクシー会社は無線でタクシーに呼びかけ、利用できる車を利用者のところへ迎えに行かせるものです。 利用者は、タクシー会社から、あと何分くらいで迎えに行けるのかを伝えてもらい、タクシーを待ちます。
 最近、携帯電話の位置情報や乗車実績をもとに、AIを使って、どこを走れば客を拾える確率が高くなるのかを 運転者に知らせるシステムを導入したタクシー会社が売り上げを伸ばしているという報道がありました。
 また「国土交通省が、外国人観光客などでも安心してタクシーを利用できるよう、あらかじめ目的地までの運賃が示されるタクシーの実証実験を行う。」 というニュースもありました。タクシーを配車するスマートフォンのアプリで乗車場所と目的地を入力すると、運賃が示され、 金額に納得して申し込みをすれば配車される仕組みで、既存のタクシーを使った日本版ウーバーと言えるものかもしれません。

 私がメキシコで体験したUber(ウーバー)は、既に実用化されていて、市民や観光客の足になっています。 「タクシーを利用したい人」と、「タクシーの機能を提供したい人」をICT(情報システム)で直接結びつけています。 言わば利用者と運転者を含む送迎の仕組みを情報システム化したものであり、利用者と運転者の利便性を追求し、 決済機能や、顧客満足度調査までセットにされている優れたシステムであると思いました。 運転者は、個人でUber Technologiesという会社に登録し、売り上げは指定した口座に毎週自動振込で支払われます。
Uberを利用者からみると、タクシーにはない様々なメリットを感じます。
・言葉がわからなくても利用できる(行先や道順について会話の必要なし)。
・道路に出て、タクシーを探し、手を挙げて止めるようなことは必要はない。
・何分待てば車が来るのか、どこまで来ているのかがわかる。
・運賃、目的地到着時刻、運転者の評価、ナンバー、車種が通知され安心。
・車内で料金を支払う必要はなく、クレジットカードで決済できる。
・乗客から運転者の評価が、またその逆もできるので、サービスが向上する。
グアダラハラ市中心部で何回も利用しましたが、いずれも待ち時間は数分で、10~30分乗車しても40~90ペソ程度でした。


 日本のウーバーは、福岡市の配車実験や富山県南砺市の実験計画が、規制や反対にあって実現できず、 京都府京丹後市で始めた事業も、多くの制約条件があるようです。日本では、これまで長い時間をかけて 築き上げてきた安心安全を守るための、業界と利用者を守ろうとするための、多くの規制ができてしまい、 その規制のために世界の国々に遅れをとり、国民が得ることのできる利益を享受することができないのでは ないかと感じました。これは日本に限ったことではありません。ヨーロッパを始め、Uberを歓迎しない国は まだ多くあるようです。

 しかしUberは、世界58ヶ国・地域の300都市で展開しており、世界を席巻していると言われています。 Uberを歓迎しない国でも、無視できなくなる筈です。メキシコでの体験から、Uberは、海外での移動手段として 非常にありがたい存在です。Uberのない都市や国は、観光客やビジネスマンが敬遠するようになるのではないかとすら思いました。 これからは、現地で使えるスマホの確保とUberの登録は、海外勤務者や旅行者にとって必須のアイテムとなる予感がします。

 日本で規制が緩和され、自由競争の中から、Uberより優れたシステムが定着し、 そのシステムが世界を席巻するようになるようなことは、今のままではあり得ないことでしょう。 50年、100年先を見て、教育から根本的に変えなければ、未だ情報システム化されていない未開拓の分野も、 アメリカ企業に席巻されてしまうのではないかと心配になります。


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