デジタル記録した情報の寿命~その1~

2017.10.26 岡田定晴
 悲しい夢(作曲:Amacha)

 今年9月のニュースで、岐阜県美濃加茂市の博物館に所蔵されていた書状が、 本能寺の変の直後に書かれた明智光秀直筆のものであることがわかり、本能寺の変の動機の解明や、 室町幕府滅亡の歴史認識の変更につながるかもしれない』ことを伝えていました。 書状が書かれたのは、天正10年(1582年)6月12日で、本能寺の変から10日後です。 また、今朝のニュースで、本能寺の変のあと混乱していた京都を治めていた豊臣秀吉が、 治安を回復するために進めてきた略奪品の返却を諦める内容を記した書状が、新たに 見つかったことが伝えられていました。 400年以上も昔のものでも、紙に書かれた記録は読むことができ、事実が明らかになります。 今、情報爆発と言われるように膨大な情報が存在し記録されていますが、 デジタル記録された情報は、果たして400年後に読むことができるのでしょうか。

 最初から時間とともに消えていくことを覚悟しているSNSの情報はさておき、 ワードやエクセルやパワーポイントやPDFファイル、JPEGの写真やmp3の音声、 mp4の動画など、記録として残すつもりで作成した情報は永遠に残るのでしょうか?

記録メディア

 記録が永遠に残るのかということに関しては、情報を記録するメディアと、どのようなファイル形式で記録するのかという2つの 要素を考える必要があります。いずれにしても私は、技術の進歩は止まることが無く、企業も永遠に継続するものではないので、 かなり悲観的、いや絶望的だと考えています。
 デジタル記録全盛の世の中になった今、①デジタル記録の良い点、②デジタル記録の弱点、③記録方式の変遷  について私の考えをまとめてみました。なお、アナログやフィルムの時代の画像、音声、映像もコンピュータデータも、同じ『情報』と考えて統一的に記述します。

①デジタル記録の良い点
 ・簡単に情報の複写ができる。複写による劣化は無い。
 ・簡単に情報の配布ができる。配布による劣化は無い。
 ・簡単に情報を移動することができる。移動による劣化は無い。
 ・デジタル記録した情報は、紙よりも軽くて場所を占有せず、環境に優しい。
 ・紙やインクやフィルム、アナログ記録テープのように経年劣化することが無い。
 ・保管した資料を、検索したりホルダーをチェックすることで簡単に取り出せる。

 今では当たり前になったデジタル記録ですが、アナログ的な記録に比べて、 大変優れた利点があり魅力的なものです。アナログ時代には、デジタル記録は膨大な情報を記録するので、 映像や音声のデジタル化の実現は難しいと思われていた時期もあります。しかし、圧縮技術の発展により、 デジタルでの記録・再生や伝送が実用的なものになりました。またこのことで、コンピュータの世界に映像や音声が入り込むことになりました。  『紙よりも軽くて場所を占有しない』という点に関しては、外付け電源の要らないUSB3.0対応ポータブルハードディスクを使うようになって やっと実感できるようになったところで、まだここ数年のことです。




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 冒頭の写真は、②デジタル記録の弱点 につながるものですが、今では復元できなくなってしまった情報のほんの一部です。 右側の5インチフロッピーディスクを見ると、1987.4.27 という日付が書かれたラベルが見えます。 また5インチの隣の列の3.5インチフロッピーディスクには94-11-09という日付が書かれています。 その左のCDRやMOは、その後の時代のものです。フロッピーディスクドライブや、MOディスクドライブは 中古品を探せば今でも入手可能だと思いますが、記録されているデータを読み取るソフトは、Windowsでは 走りません。また、最近のパソコンやノートPCは、DVDなどの機械的な駆動部分のないものが多くなりました。 ハードディスクですら、メモリーに置き換わっているものもあります。もちろん、タブレットPCは、それが当たり前です。 外付けのインターフェースとしてUSB3.0のスロット、そしてSDメモリスロットなどしかなく、 インターネットでクラウドストレージを活用することを想定しているようにも思えます。
 この30年間の記録媒体を振り返ってみると、目まぐるしく変化しました。 『少し前に記録した情報が復元ができない』ということは、当然のことだったように思います。 新しい記録媒体が登場するたびに、既存の記録媒体にある音声・映像・情報など、全てを コピーしておかなければ、貴重な記録もいつかは再現できなくなってしまいます。 最新の記録媒体に情報をコピーしていたとしても、それを読み取るソフトが存在しなくなっています。

 次回は、②デジタル記録の弱点、③記録方式の変遷 について私の考えをまとめます。


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