清掃したら治った ~テレビリモコン~

2018.06.19 岡田定晴
 冬の日のエチュード(作曲:Amacha)

テレビリモコン  昨年の夏ごろから、テレビのリモコンで、電源の入切ができなくなりました。最初は、不具合の頻度も少なく、丁寧にボタンを押したり、強く押したり、 何度も繰り返していれば動作していたものが、冬を迎えるころには、どのように操作しても、またリモコンの電源を取り換えても動かなくなりました。 テレビ本体で電源操作が出来る筈と思っても、電源スイッチは見つかりません。普通に見える位置にスイッチはありません。 時間をかけてやっと電源スイッチのある場所を見つけました。ワイヤレスリモコンが普及する以前は、電源スイッチやチャンネルツマミは、テレビの前面パネルにあり、 そこで操作していました。テレビは今のように平面ではなく、ブラウン管を使用していたため大きな箱型の装置でした。 ワイヤレスリモコンや、プラズマや液晶などの平面パネルが普及するに伴って、テレビ本体のスイッチ類は、どこかに隠れてしまいました。 リモコンがなければ、何もできなくなってしまいました。

テレビリモコン2  テレビ本体の電源スイッチを使うようになって、リモコンの電源ボタンの故障のことは忘れてしまったかのような生活をしていました。 リモコンは、電源ボタン以外は問題なく働きました。でも、故障の原因がリモコン側にあるのかテレビ側にあるのか、原因がつかめませんでした。 あるとき、テレビ台の引き出しの中にあったもう一つのリモコンが見つかりました。このリモコンは、手に持って動かすとテレビ画面にポインターが 表示され、マウスをクリックするようにボタンを押せば、画面に表示された機能が選択できるものです。でも、使いづらいので、ずっと引き出しに入れたままでした。 そのリモコンで、テレビの電源の入切ができることがわかりました。だから、テレビ本体には問題は無く、いつも使っているリモコンの電源ボタンだけが 故障したものと断定できました。


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 やっとテレビリモコンの修理を頼もうと思い、購入した家電量販店に行くことにしました。調べてみると、「5年間保証」を付けていました。 購入時にお金を払うと、あるいは貯まっているポイントを使うと、購入時から5年間の保証を付けてもらえるものです。 5年間のうちに故障することは無いと思いつつも、店で勧められてついつい契約してしまいました。 これで、5年間保証が役に立つと思って、リモコンと保証書を持って家電量販店に行きました。 店で話すと、リモコンは消耗品なので5年保証の対象外と言われました。書類をよく見ると、確かに 5年保証から除外する品目の中に、リモコンが入っていました。店員は、熱心にリモコンの故障状況を調べていましたが、 私の判断と同じでした。私はそれを聞くと「もう一つリモコンがあるので困ることは無い。修理はしない。」と伝えて店を後にしました。
リモコンとバターナイフ  良い機会なので自分で修理しよう、それでリモコンを壊してしまっても構わない。どのみちお金を支払わなければならなかったのだからと思いました。 故障しているスイッチの接点を見るために、先ずはリモコンを分解しなくてはなりません。 そのためには、爪の厚さ位の刃金が必要ですが、それに代わり得るものとして、小さなバターナイフを用意しました。 少し時間をかけて、結合している部分をバターナイフを使ってゆっくりと拡げていきます。 カチャッという音がして、少しずつ開いていきます。リモコンケースを壊すことなく、分解することが出来ました。
分解したリモコン  開けてみて、びっくりしました。見た目があまりにもシンプルなのです。 押しボタンの裏側は、一枚のゴムシートになっていて、ボタンになっている部分の裏側に黒い円柱形の突起の ようなものがありました。更にそれを受ける基板側は、ボタンを受ける部分に特殊な模様があって、それらが細かな配線で 繋がっていました。またリモコンの一番下の基板部分には、LSIが配置されていました。
分解したリモコン  左上の少し赤みがかかった大きな丸の部分が「電源ボタンの裏側」で、基板の左下が「電源ボタンを受ける基板側」です。 ボタンが基盤を押すことによって、電気抵抗が減り、電気が流れやすくなることを検知して、赤外線LEDを通じてテレビ本体に 電源入切の情報を送っているのでしょう。 分解したリモコン 何らかの理由で、ボタンと基板がその役割を果たさなくなったのでしょう。ここまでくれば、修理は簡単です。
 妻に、綿棒数本、小皿に焼酎を入れたもの、同じく小皿に水を入れたものを用意するように言いましたが、 自分がやろうとしていることが理解できないらしくて、動きが鈍いのです。焼酎が無かったので、日本酒で 代用しました。まず、綿棒に日本酒を含ませ、ボタン側と基板側を、汚れが落ちるように少し強く拭きました。 次に、日本酒のアルコール以外の成分が残らないように、綿棒に水を含ませて、何度も強めに拭きました。
リモコンの復旧  さて、リモコンの蓋を閉じる前に動作確認をしました。電池を接続し、電源スイッチを押したところ、テレビが消えました。 暫くして、電源スイッチを押すと、テレビの電源が入りました。故障部分の修理はうまくいきました。 ここまで確認して、元通りにカチッと蓋をかぶせて修理が完了しました。修理をした翌朝も、新品のリモコン同様に、 ボタンの押し方に注意を払わなくても確実に動作しました。
 さて、5年保証の件ですが、消耗品だからという理由でリモコンは対象外になっていました。 昔のテレビと違い、リモコンはテレビ受像機を制御するために無くてはならないもの、 テレビを構成する一部の重要な制御回路です。メーカーが一年間しか保証していないのに、 家電量販店が5年間保証するという理屈が良くわかりませんが、顧客の側からすれば、 テレビ本体の重要な構成要素であるリモコンが保証の対象外とは思えません。 言われて保証書の入った入れ物を見れば、「リモコンは保証の対象外」と書かれていますが、 5年保証を申し込む段階で、「リモコンは対象外」という説明などありません。 リモコンは、床に落としたり水に浸かったり、というリスクはあるでしょうが、 それでも壊れないという自信を持って作って欲しいものだと思います。
 もし、今も日本の家電メーカーが強かったなら、メーカーとして5年間保証し、 不具合が生じた原因を徹底的に調べて対策を講じて、世界から認められる商品を提供していたことでしょう。 でも、そうした良き時代は過ぎ去ってしまいました。価格競争力の勝るアジアのメーカーが 力を持っています。今回、私が自分で修理したことで、メーカーとして本当の故障原因(接点部分に何があったのか、 製造工程に問題が無かったのかなど)が特定できず、改善の機会を逃したでしょう。 その損失は大きいかもしれないと思いました。
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