iOS用ステレオマイクが教えてくれたこと

2018.07.17 岡田定晴
 夏空と金魚(作曲:Amacha)

 私は、ICレコーダーをこの10年間に2台買いました。 一台は電子楽器メーカーが製造したもの、もう一台は家電メーカーの製造した超小型のものでした。 しかし、iPadを持つようになってからは、この2台のICレコーダーはほとんど使わずに、 iPadに『Voice Recorder HD』というアプリをダウンロードして使っています。 その理由は、多くの機材を持ち歩くことや電池を管理することが面倒だからです。いつも持ち歩くiPadの中に その機能が収まるようになれば、よほどの難点が無い限り、iPadを使います。同様なことが、カメラやビデオ、 ラジオやテレビで起きています。このようにして、電子機器のほとんどはiPadの中に納まってしまうのではないかと 思われます。
 さて、3か月ほど前に、iOSのデバイスに接続できるステレオマイクがあることを知りました。 実際に、使わせていただきました。以下のような機能で構成される小さな装置でした。
・MSステレオマイク(単一指向性のステレオマイクと左右の音を拾うステレオマイク)
・録音レベルの調整つまみ
・レベルメーター(中央のLEDが点灯するレベルで使用)
・ステレオ幅調整スイッチ
・ヘッドホン端子
・Lightningコネクタ(コネクターに裏表はないが、逆向きにすると左右が逆に)
・ケースアジャスター(ケースを装着した状態使う等接続を妨げる際には外す)
 手持ちのマイクロホンのように使用する場合も、ビデオ撮影をする時も、 単一指向性のMidマイク上部の矢印の向きが録音対象に向くようにマイクを回して調整します。 録音中に無線通信が行われるとノイズが入ることがあったり、電話機能を使うと録音が停止 するので、iPadやiPhoneを機内モードにして使用します。 最初は、マイクの扱い方がわからず、左右の関係が上手くいきませんでしたが、 音が澄んでいる感じ、クリアで現実に近い感じがしました。iPadの内蔵マイクと比べれば その差は誰の耳にも明らかだと思えるものでした。
 このマイクには、”Designed by ○○○○ in Japan, Assembled in China”と書かれていました。 この製品に限らず、今は何を買っても同じように書かれています。昔のように、”Made in Japan” という文字を見なくなったことに淋しさを感じました。これが、現実的な道かもしれませんが、 中国企業もいつまでも組み立てているばかりではなく、いずれ自らの力で設計し製造するようになるのだろうと、 いつも心配になります。


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 音質や画質は、アナログ回路の時代は、波形(電流や電圧)の 信号処理をしていたので、波形を歪ませずに忠実に拡大することや、 ノイズが発生しないようにするという面で、装置の差が出ました。 今ではピンときませんが、 カセットテープやオープンリールのヒスノイズ、 ビデオテープの磁性体の剥がれによるドロップアウトノイズ、 電源周波数の50Hzや60Hzのハム音、 振幅変調方式(AM)の電波が影響を受ける雷雑音や、 道路を走るバイクなどのエンジン回転数に同期したイグニッションノイズなどがありました。 オーディオケーブルの材質や、シールド、配線の仕方、アースのとり方などでも 性能に差がありました。
 今でもAMのラジオは残っているものの、 あらゆる装置がデジタル化されソフトウェアで処理される時代、 ネットラジオが普及し、テレビや記録再生装置もデジタル化された現代では、 音質や画質は、同じ規格のデジタル方式であれば、どの機器であっても差が出ない ようになりました。波形を扱わずに、1か0かのデジタルデータを扱うようになったからです。 従って、音質や画質は、マイクやカメラなど、アナログからデジタルに変換する部分の性能 によって決まってしまいます。
 この外付けのマイクは、そのことをはっきりと教えてくれました。 アナログからデジタルに変換する部分(マイク)を高性能なものに置き換えれば、 記録再生装置はそのままでも、装置全体が高性能なものになるということを・・・。
 この製品は、スマホの普及、YouTubeや音声共有サイトやInstagramなどのメディアやSNSの普及によって 世界のクリエーターや一般の人々の音質に対するこだわりやニーズが背景にあって登場したのでしょう。 JASDACに上場している日本の企業が開発したということも、嬉しいことでした。 日本の家電メーカーが隆盛を誇った時代が懐かしくなった今、古い大きな木が倒れたあとに 新しい芽が出てきたように感じました。大地に根付いたしっかりした丈夫な木になって欲しいと思います。


[参考] 10年前、20世紀の電子機器の殆どあらゆるものが、iPodtouchのアプリの中に吸収されていくと感じたことを思い出しました。 また、昨年のCEATECで見たような『新しい芽』を感じました。

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CEATECで見える「現在、過去、未来」~その2~

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