国家戦略の重要性 ~その2~

2019.10.03 岡田定晴
 悲しい夢(作曲:Amacha)

 7月4日から、政府は韓国への半導体材料3品目の輸出管理を厳格化しました。 日本の供給比率が高いフッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の3製品で、関連する製造技術の移転も含むとのことでした。 日本政府はさらに、武器の転用や開発につながる恐れのある輸出貨物を規制する外為法輸出貿易管理令を改正し、 武器管理の徹底を条件に輸出規制を緩和する「ホワイト国」から韓国を除外しました。 韓国の文大統領は、この決定を無謀だと非難、外交努力を拒否して事態を悪化させた責任は日本政府にあると主張し、 日本をホワイト国から除外しました。また、韓国の中小規模のコンビニエンスストアやスーパーで日本製品の不買運動が広がり、韓国からの訪日客が大幅に減少しました。 ホワイト国除外だけでこれ程のリアクションを示すのを見て、それほどまでに韓国の産業が日本の技術に頼って成立していたのかと思いました。

香港島フェリー乗り場近くの歩道橋から中環方面を望む
 シャープは9月25日、6.4インチの有機EL表示板を使いゲーム用にタッチパネルの反応速度を高めた機種や、 電池の容量を従来の1.5倍に増やし電話やメールを中心に1日1時間程度使用した場合に充電せずに1週間使える機種など、 この秋から冬にかけて発売するスマホ3機種を発表しました。 台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業に買収されたシャープは、もう日本のメーカーと言えないと思いますが、 携帯電話の国内シェアを伸ばし、中国市場で液晶テレビが劇的に販売台数を伸ばしている状況は嬉しいものです。 アジアの企業と一緒になって、お互いの強みを生かし、新しい価値を生み出していく時代になったと感じます。

Tsim Sha Tsui 駅近くのモスクを望む
 ソニーは、将来を見据えた戦略があり、業績不振でもスマホから撤退しないようです。
①この3年間は、事業のリカーリング化(継続的な収益を生み出すビジネスモデル化)によって利益の質を高める。
②クラウドにアプリケーションの価値が集まり、最終的に手に触れるモノに価値が生まれる時代に、 「感動」をもたらす映像と音楽を楽しむ製品やサービスを起点に、コンテンツ事業へと結びつけ、“事業のリカーリング化”を進める。
③5Gはスマホ以外の様々な製品に入っていく。グループ全体で通信技術を展開していくには、社内にその技術を有していなければならない。 経営陣の総意として、スマホノ販売台数が縮小しても事業継続できる体制を再構築する。
④スマホの時代には乗り遅れたが、2020年代に訪れる変節点(モノ、デバイスがネットワークへ接続され、社会全体がネットワークで繋がる5G時代の到来) に、ソニーが先頭を切って進んでいくための「仕込み」の時期である。

 目先の利益に目を奪われず、長期的な戦略を描いて、目的に向かって進んでいくから、他に真似ができない強い商品が生まれるのでしょう。 次々に革新的な商品を生み出してきたかつてのSONYをもう一度見ることが出来ることを期待しています。



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香港島の夜景2
 私は香港に、1981年(昭和56)、1991年(平成3)、2007年(平成19)、2017年(平成29)の4回訪れたことがあります。 正確に記録している訳ではないのですが、かつて、PIONEER、SONY、Panasonic、SANYO、KENWOOD、JVC、TOSHIBA、HITACHI、NEC、AIWA、SHARP、MITSUBISHI、EPSONほか、 日本のエレクトロニクスメーカーの無数のネオンサインが香港島の夜景を飾っていましたが、2017年(平成29)に訪れたときには見る影もありませんでした。

 中国、韓国のメーカーは日本のメーカーを手本にし、日本のメーカーは中国、韓国に工場を建て技術を供与しました。 日本の家電メーカーは、1970年代ころから東南アジアに工場を建て始め、1985年のプラザ合意以降、その勢いが加速しました。 日本は円高を容認せざるを得なくなり製品の価格競争力が損なわれ、これに危機感を持ち、人件費の安いアジア諸国に工場を移転し、製品価格を抑えようとしました。 長年努力して創りあげてきた技術が無償で提供され、工場移転先の国々の技術力が向上しました。 アジア諸国は、日本製のコピー商品をつくり、安い人件費を武器に価格競争で日本に勝ちました。 日本の家電企業の不振は、安易な海外進出で起きたものと考えられます。

 一方、日本国内で頑張った企業は、生き残っています。素材産業や、建設機械のコマツなどの例は、テレビ番組で紹介されています。 今後、日本企業が地盤低下をしないために、同じ失敗を繰り返すことがあってはならないでしょう。 日本企業は、株主の利益を優先するばかりに安い人件費を求めて海外に移転し、技術まで移転してしまって失敗しました。 日本にいる社員や下請け会社の雇用、技術を大切に考えることが何よりも重要でしょう。


香港~空港の列車車内
 9月25日未明に種子島宇宙センターから、食料や水・実験装置など5.3トンの荷物を載せて打ち上げられた「こうのとり」8号機が、 29日0時8分に国際宇宙ステーションに到着し結合し、8回連続の輸送成功となりました。 これは、本当に長い年月をかけて、政治や行政や研究機関や企業など多くの方々が努力を重ねてこられた結果で、日本人として誇りに思えることです。

 個人が独自ドメインを持って自分のサイトを運営できる時代になり、金融、外交、経済、その他専門的な経験と実績を持つ政治家のホームページを見て、 どのような人に国政を託したら良いのかがはっきりとわかるようになりました。国政を託すべきと思う人が、必ずしも当選するとは限らないのは残念ですが。 日本の将来を真剣に考える「実務経験や専門性の高い政治家」に、20年先、30年先、50年先を見た日本の戦略を練り上げて欲しいと思います。
 企業の優れた戦略も必要ですが、日本が国家戦略を持って目標に向かって進んでいくことが、平和に豊かに生活できる未来に導くでしょう。

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ICT(情報通信技術)発展の裏側 ~その2~



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