NHKテレビ放送のネット常時同時配信

2019.11.29 岡田定晴
 夜明けの空(作曲:Amacha)

NHKスタジオパーク入口にて
 2019年5月29日の参議院本会議で、NHKのテレビ放送のインターネットへの常時同時配信を認める改正放送法が成立しました。 NHKは、『テレビ放送と同時にインターネットでも常に放送を見ることができるよう、準備を本格的に進めている。 放送を補完するサービスで、受信契約を結んでいる世帯は追加の負担なく利用できる。』と伝えていました。

NHKは2019年度中の実施を目指して、10月15日、総務省に実施基準案の認可申請を行っていましたが、 総務省は11月8日、NHKに再検討を求めました。また、総務省は11月9日から12月8日に一般から意見募集をするとともに NHKにも回答を求めています。

再検討の理由は、
・実施基準案のネット配信費用に別枠があって予算が拡大している
・収支の赤字を拡大する恐れがある
・市場競争の阻害につながるとの懸念
とされています。

NHKネット事業費縮小を報じる新聞
 11月28日から29日にかけて、インターネットや新聞各社は、NHKが、テレビ放送のインターネットへの常時同時配信を含むネット業務全体の費用を大幅に削減する方針を固めたと報じています。

 私には事実関係はわかりませんが、日本が世界から取り残されないように、また国民生活がより豊かになるように、将来を見据えて戦略的な取り組みが必要な時代に、インターネット配信にブレーキをかけて欲しくはありません。 『受信料で制作された放送番組により多くの視聴者が接する機会を増やすことを可能にする。』という視点が無く、『民放・新聞 対 NHK』という構図しか感じられません。 既得権益を考え『従来メディア 対 新メディア』という視点が無いから、日本が世界から遅れてしまったのではないかと思います。

インターネットでNHKの放送を見たい

 スマホが普及し、インターネットが生活に不可欠な社会基盤となった時代に、インターネットで放送コンテンツを見ることは、極めて自然なことです。 テレビを放送電波で見るかインターネットで見るかは問題ではなく、必要な時に見たい番組を見ることができれば良いのです。

『インターネット同時配信は、受信契約を結んでいる世帯は追加の負担なく利用できる』という方針は、受信料を支払う視聴者は大歓迎です。 TV受像機の無い場所でもネット環境でNHKの番組が視聴できるようになれば、受信料に対する受益感が高まります。 これまで様々な理由で視聴する機会の無かった貴重な放送番組に接する時間が増え、より多くの人々が番組を見ることにも繋がります。

衛星放送が始まった時のように新しい番組を制作する必要はありません。放送を見る機会の損失を減らせたら満足できます。 大規模災害など緊急事態が発生した時には、(今でも放送が同時配信されていますが)インターネット同時配信は貴重な情報源になります。 企業の職場にテレビ受像機はありませんが、インターネットに繋がったパソコンはたくさんあります。 これによって、どれほど多くの人命や財産を救うことができるでしょうか、有益な情報をもたらすことができるでしょうか。

インターネット同時配信で想定される課題

○データ通信料金を考えると利用方法が限定される
 スマホで視聴できるようになれば見るかといえば、そう単純な話ではありません。 スマホやワイヤレスルーターのデータ通信料は高価(従量制プランで7GBまで5980円或は50GBまで8480円、大容量プランで30GBまで6980円或は無制限8980円或は50GBまで7480円)で、 通信料が月間データ容量を越えた場合、月末までの通信速度が最大128kbpsに制限されるケースが殆どでしょう。 通信速度にこの制限がかかると、ホームページを表示することすら難しくなり、実質的にインターネットが使えない状況になります。 7GBというデータ量は、映像の内容に依存するのではっきりとは言えませんが、私の手持ちのmp4の映像素材で推定すると約50分です。

そうすると、WiFiの使えない屋外でNHKの常時同時配信をスマホで見ると、そのことでデータ量を使ってしまい、ネットを閲覧したりSNSに参加したりできなくなります。 データ通信量が気になって、多くのユーザーは放送を見ずに、スマホ本来の用途で使うでしょう。

従って、常時同時配信が実現しても、視聴する場所は、自宅や会社などでWiFiが使える場所に限定されるでしょう。 30秒とか1分のコンテンツであれば、データ通信量をあまり気にせずに見ることが出来るでしょうが、テレビ番組は30分や15分など長時間です。テレビのためにスマホが使えなくなっては本末転倒です。 5Gの時代にはそうした制約も緩和されるでしょうが、まだ料金体系が分かりませんし、日本全国で同時にサービスが始まる訳でもないでしょう。

○単なるインターネット常時同時配信だけでは足りない
 ・仕事などの時間的制約があって見れない番組を見たい。
  (録画機の予約作業は面倒)
 ・生放送以外は、常時同時配信よりオンデマンドの方が利用価値が高い。
  但し有料のNODとの関係から、『1週間』という様な線引きが必要。
 ・オリンピックなど、同時並行で進行するものは、選択して見たい。
などのニーズを満たすには、常時同時配信だけでは不足です。



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それでも常時同時配信を実現して欲しい

 インターネット常時同時配信は、これまでの放送のように、最初から完全なものにはならないでしょう。 それでも、将来のために第一歩を踏み出して欲しいのです。小規模なサービスから無理をせずに徐々に充実させていけば良いと思います。 以下、放送法の枠を超えるものもあると思いますが、放送電波以外の情報伝達手段が社会インフラとなり発展している時代に、 将来に向けた視聴者へのサービスを真剣に考えて欲しいと思います。

○ 正確で迅速な報道、豊かで質の高い番組をあらゆるチャンネルを通して発信して欲しい。
 地域放送、緊急・災害報道、ニュース・情報番組、ドラマ・音楽・教育番組、国際発信、 メディアの開拓(テレビ、FM、衛星・衛星D放送、HV、地上D、4K・8K)、インターネットによる 情報発信などにより、私たち視聴者が長年にわたって得た価値は大きなものです。 今後更にNHKの番組に接する機会が増えるよう、一層の努力をして欲しいと思います。

○ 放送電波にない『時間の超越・空間の超越・双方向』といった特質を生かして欲しい
こうしたインターネットの特質を生かして『良質な放送番組』が、より多くの『忙しい現代人』に届くように努力して欲しい。 単なる『常時同時配信』では、利用価値はこれまでの放送と同じで発展もありません。 『常時配信』という放送の形態は、単に伝送面の技術的な制約によるもので、インターネットの世界にそのまま持ち込む必要は無いでしょう。

○ 海外在留邦人や日本人旅行者への配慮
 海外に拠点があって日本のテレビ放送を有料で配信している業者が存在します。 (iPhone・iPad・スマートフォン・タブレット・PCで、日本の地上波8局、BS19局、CS5局、最大32局の番組がWiFiや4G環境で視聴できるIPTV(SDTV品質)) 外務省の海外在留邦人数統計によると、平成30年(2018年)10月1日現在の集計で、わが国の領土外に在留する邦人の総数は、長期滞在者と永住者を合わせて139万370人となっています。

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参考)外務省「海外在留邦人数調査統計 令和元年版(平成30年(2018年)10月1日現在)」  http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000043.html

音声や映像を海外に送り届けることが難しかった時代から、技術の発展とともに、音声や映像に国境のない時代になりました。 そうした時代に相応しいサービスが求められ、充分なニーズがあってこうしたサービスがあるのでしょう。 海外に駐在する日本人の間では、日常生活に不可欠なものとなっています。 日本の放送局がもっと世界を見て、このような業者の存在を許さないサービスを提供できないものでしょうか。 こうした業者は、国内の既得権争いという狭い視野に閉じこもっている日本を見て笑っていることでしょう。

同時配信ではありませんが、海外旅行をしていて、日本の放送局のインターネットニュースを、日本国内と全く同様に見ることができました。 普段インターネットでニュースを見る習慣があるので、海外では日本のテレビ放送を見ること以上に心強く、有難く感じました。

○ 従来と違う伝送路での番組提供
 テレビを見ることが出来ない場所でも、あるいは台風や落雷などの災害で放送が止まってしまった時でも、インターネットに 繋がるパソコンはたくさんあります。 地震や津波、火山の噴火、その他重要な報道など、ストリーミングで配信されるコンテンツは、貴重な情報源です。 3.11のとき、テレビの設置されていない会社などで、詳しく状況を知ることが出来たことが知られています。

○ 技術やノウハウの蓄積
 新しいメディアを開拓していくには、『技術』が必要です。 この『技術』というのは必ずしも『技術者』という意味ではありませんが、番組(コンテンツ)制作者あるいはメディアの開発者の近いところに居て、 適切な情報を提供して議論し、その意思を迅速・確実に具体化する人が居なければ、多くの誤りや無駄が発生することでしょう。長期的な戦略も描けません。



 深い理解の無いまま、間違った仕組みを大規模に社会に適用されることほど、非効率や不幸をもたらすことはありません。 このようなことにならないよう、また、新しい技術を使って放送を進歩させるという観点から、『技術やノウハウの蓄積』は重要でしょう。 そのためにも『インターネット常時同時配信』という第一歩を踏み出すことが必要であると考えます。

 いつまでも過去にできた秩序にこだわる議論をして、先に進もうというチャレンジを妨害することは、 国民が技術発展の恩恵を受ける機会を奪うもので、日本が世界の流れに乗り遅れていくことであるように感じます。 視聴者、国民のことを第一に考えて、将来に供えてほしいと思います。

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